機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(49)

福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(49)local_offer

ケアマネジャー 増田佳美

グリーフケアについて

今年に入り、母と兄を亡くしました。母の時は、遠方である上、コロナ禍で面会も十分できないまま、葬儀への参列となりました。葬儀は次兄家族と妹、私達夫婦の身内だけで行い、昔の思い出話に花が咲きました。昭和の時代を生きた祖父母や父、叔母たちの姿は、孫達にはどのように映ったでしょうか。天寿を全うした母は、孫やひ孫にも囲まれ、今も笑顔で皆を見守っているように思います。

その2カ月後に長兄が亡くなりました。療養中だった兄は、まだ逝くには早過ぎる歳で、最期の日々に何を思い、過ごしていたのかと、棺に納まった顔に問いかけました。葬儀で義姉と姪が泣きじゃくる姿を見て、過去には穏やかではない時期もあったけれど、最期は自分のために涙を流す家族に看取られ旅立ったのだと、安堵の思いで見送りました。

早くに父を見送り、舅、姑を見送り、今回母と長兄を見送り、いよいよ見送られる側の先頭に立ち、子や孫達はどのように自分を見送り、どんな思い出話をしてくれるのだろうか、とふと考えてしまいました。

舅、姑とは長年共に暮らし、介護した期間も長く、簡単ではないことも沢山ありました。当時は精いっぱいの介護でしたが、振り返ると、もっとできた事や、掛けてあげる言葉があったのではないかと思う事がよくあります。傍で見ていた子供たちにとっても、決して模範になるような母の姿ではなかったと後悔ばかりですが、義姉から「あなたに看てもらって両親は幸せだった」という言葉を頂き、それが慰めとなっています。ケアマネジャーという仕事柄、死と向き合う機会が多くあります。身内の死が続き、改めてケアマネ業務の「グリーフケア」について考えました。

「グリーフ」とは、「死別等による深い悲しみや悲痛」を意味する言葉です。グリーフを抱える人に寄り添い、死を受け容れ立ち直ることができるように支援することがグリーフケアです。

被支援者のかたが亡くなられると、ケアマネとしての支援は終結します。弔問には伺いますが、その後は個人的な交流はしないことが決まりです。日常の支援では、介護サービスの調整に思いをかけることが中心で、亡くなられた後のご家族のケアに対しては、充分な支援をすることなく終了することも多くあります。長い間、深い関わりを持っていても、本人の死でご家族との関係が途絶えることに寂しさも感じますが、業務として割り切っています。

ただ、ケアマネだからこそできるグリーフケアを意識した支援もあります。死別後の支援のみならず、終末期にある本人やご家族に対しての関わり方によっても、グリーフを小さくできるのです。

また、このグリーフは遺族だけでなく、介護に関わる者も持つ感情です。関わった介護スタッフにもグリーフケアは必要です。振り返りの場を持つことは、悲しみを和らげられ、次に繋がる場にもなります。死に出遭い見つめると、生きる意味を問いかけられるのです。

福祉の仕事は、人の人生に深く立ち入る仕事です。私は、そのかたの望む生き方を支え、見送った後まで、丁寧に支援していきたいと考えています。